約 2,830,266 件
https://w.atwiki.jp/ranoberowa/pages/281.html
第240話:Escape! 作:◆Wy5jmZAtv6 時計を見る…もう2時間も経過している。 「まいったなぁ」 パイフウはため息をつく、眼下にはハックルボーンら3人の姿。 「あの筋肉親父、かなり出来るわね」 さりげなく立っているように見えて、しっかりと自分の位置からは死角になる、 そんな絶妙のポジショニングだ…まぁ偶然なのだが。 だからといって接近戦はもっての他、あの身体能力は脅威以外の何者でもない。 ならば退くか…だが自分の入ってきた入り口へと戻るには彼らのいる場所を通過せねばならない。 他の出入り口を探すのも手だったが、今の状況で出会い頭の遭遇戦は避けたかった。 そんなこんなで不毛な時間が続く中、パイフウはゆっくりと呼吸を整え、気を練っていく。 最初はかなり戸惑ったが、ここ数時間の慣らしによってかなり練れるようにはなってきている。 それでも本調子とわけにはいかないが。 とにかく焦ってはならない、慎重に行かねば… 「でも、何か動いてくれないと…ね」 「あ、おっきなお城」 島津由乃は目の前にずでーんと広がる城壁をみて嘆息する。 とりあえず入り口を探してくるりと周囲を適当に回ってみたが、見つからない。 ちなみにその時立小便している人(平和島静雄)を見つけたが、なんだか雰囲気が怖そうだったので、声をかけるのはやめにした。 「あ、もしかして幽霊だから大丈夫かな…」 そーっと城壁に手を沈めていく由乃、音もなく手は壁へと侵入していく。 「あ、やっぱりOKか、なんか手品師になったみたい、奇跡のイリュージョニスト、ヨシノ・シマヅなんてね」 こうして城へと進入を果たす由乃、すでに自分が死んでいることはなるべく考えないようにしていた。 そして城の中に入ったその時、 「誰?」 少しだけ外の空気を吸いにきたキーリと鉢合わせしたのだった。 「あああああっ…あのっ」 いきなりの遭遇に慌てたのは由乃。 「あっ、あやしい者じゃないんです…わたし島津由乃っていいまして、ちょっと理由があって でもでも、昨日の朝まではちゃんと生きていてっ!」 そこで由乃はキーリがまったく驚いていないのに気がつく。 「あの…私幽霊なんだけど、驚かないの?」 「うん、私そういうの見えるから」 特に感情を込めることなく応じるキーリ。 「本当にいたんだ」 どちらかといえば、そういう話をする自称霊感少女を嘘つき呼ばわりしてた由乃である。 ちょっと目からうろこが落ちた。 でも、驚いてくれなかったのはちょっと残念な気がした。 「私の名前はキーリ」 キーリはやはり感情を込めることなく、由乃に自己紹介をする。 笑ったらもっと可愛いのに、と思いながら握手をしようとして、もうそんなことはできないと 思い出し、由乃はそっと手を引っ込めた。 「声?」 白い大理石の廊下を歩くキーリと由乃。 「うん…由乃ならわかるかなと思って、多分最近ここで殺された人だと思うんだけど」 事も無げに血なまぐさい言葉を口にするキーリ。 「何か私に伝えたいことがあるような…そんな声、よく聞こえないんだけど」 由乃は一瞬ぎょっとしてきょろきょろとせわしなく首を動かす。 自分も同じとわかっていてもやはり怖い。 「どう? わからない?」 そんな自分に真剣に答えを求めてくるキーリ。 (やっぱりこういう子って普通じゃないんだ…もったいないな) 「あのさあ」 見えるのは認めるとして、もう少し普通に…、と由乃が言いかけた時だった。 「彼女から離れよ」 振り向いた先にはハックルボーンのむくつけき姿があった。 「不浄なる者よ。彼女から離れよ」 由乃に向かい断言するハックルボーン、その口調に怯えキーリの背中に隠れる由乃。 「あっ…ああああっ、あの、それはわかるんです、でも」 「ほら…いいいいろいろ未練がありまして、その…ねぇ」 自分でも何を言っているのかわからない、とにかく成仏する意思はあるのだということを伝えないと…折角戻れたのに、このまま何も出来ないままではあの人に申し訳がたたない。 だが由乃のそんな葛藤などこの神父は一切考慮しない。 「未練など捨て、神の御許へ召されよ。迷う必要などない。迷いこそ神への背信」 ずいと進み出るハックルボーン、気押され下がるキーリ。 「ですけど神父さま…由乃は嫌がってます」 「それこそが神への背信に他ならない」 ああ…この人も同じだ…。 キーリの頭にヨアヒムの顔が浮かぶ。 でも…欲望に忠実なだけヨアヒムの方がまだマシな奴かもしれない。 少なくとも自分の正義に酔ってる奴より。 「神を疑うことなかれ」 ハックルボーンはただでさえ厳しい顔をさらに険しくして、キーリらに迫る。 キーリは由乃をかばうように立ちはだかる。 「あなた方の神に祝福を」 ハックルボーンは拳を構える。 「2人そろって神の御許へ召されよ」 その時だった…彼らの間を分かつように銃弾が飛来したのは、 ハックルボーンの注意がそれた時にはキーリはすでに逃げ出していた。 「死んじゃえ」 そう捨て台詞を吐いて。 当然後を追おうとするハックルボーンだが、さらなる銃弾が彼の脇腹に命中する…しかし、 「我が鋼の信仰はこのような物で砕かれたりはせぬ」 ムン! とポーズを決めると脇腹の傷から弾丸がひしゃげて床に転がり落ちる。 そしてハックルボーンは弾丸の飛来した方角へと猛ダッシュをかけるのだった。 「なっ…なによあいつは」 ハックルボーンの恐るべき肉体を目の当たりにしたパイフウ。 気で弾丸の軌道を曲げておかなければ、今ごろここを捕捉され…あえない最期を遂げていただろう。 なれない事はするんじゃない、あの最初の一撃が命中さえしていれば…。 とにかく脱出口が開いた、もうこの城には用はない。 パイフウも神父が戻らぬうちにと撤収を開始した。 一方のキーリと由乃。 「はやくっ! はやく逃げて!!」 かんかんとリズミカルに階段を降りるキーリ、ふと振り向くと由乃が転んでいる。 「あなた幽霊でしょう!! 何人間みたく転んでるのよ!!」 「まだなって2時間しか経ってないんだからいいじゃないの!!」 口論しながら走る2人。 「そこ、そこから私城にはい…」 鈍い音がしたかと思うと額を押さえうずくまってるキーリ。 「あ…ここすり抜けたんだ、私」 「どうせ落ちは読めてたけど…死んじゃえ…もう死んでるか」 恨みがましい目で由乃を睨むキーリ。 どうしよ…そんな表情でおろおろする由乃、その時。 「え…あ…はい」 突如僅かだか耳元に聞こえる声に返事をする由乃、声の主は若い男のものだった。 「何…右に亀裂……はい」 男の声は用件を一方的に告げて消えてしまった。 今のがさっきキーリが話していた、「声」なのだろうか? なんか自分がまた一歩本格的に幽霊になってしまった、そんな気がして落ち込む由乃、 そんな彼女はさておき、キーリはすでに亀裂から外へと脱出していた。 そして…残されたのは神父と、 「何をしている? こちらに来られよ」 傍観しまくりで怯えまくりの地人だった。 「この地には不信神者が多すぎる。汝はどうなのだ?」 静かな、しかし途方もなく深い怒りと悲しみを込めてハックルボーンはボルカンに問いかける。 「そ…それはぁ」 殺される、何か言わないと殺される。 社会の底辺に生きる者ゆえの生存本能でボルカンは危険を察知していた…。 しかし察知しただけで何も出来ないのが地人の悲しさだったが、しかし。 「全部オーフェンが悪い」 思わず口をついて出た言葉に自分でも驚くボルカン。 「オーフェン? 何者か?」 もはや止まらなかった…ボルカンはここぞとばかりにオーフェンがいかにひどい奴か、 そしていかに自分が虐げられているかを、 次々と脚色をふんだんに交えまくしたてていった…そして。 「そのオーフェンとやらを即刻浄化せしめよう」 神父がその気になるのにそうは時間はかからなかった。 「そ、それじゃあそういうことで…」 わなわなと義憤に両手を握り締めるハックルボーンを横目に見ながら、そっと退場しようとするボルカン。 「待つがよい。ここで我らが会えたのも神のご加護に他ならない」 その肩をむんずとつかむやたらとでかい掌。 「共に行こう。それが神の御意思である」 もはやボルカンに抵抗することはおろか、選択する余地すら与えられていなかった。 ようやく城から遠ざかることが出来たキーリと由乃、 全力疾走でくたくたのキーリに対し、幽霊である由乃は平然としている。 それを見ている内に、だんだんとむかついて来るキーリ、 「じゃあ私行くから」 それだけを伝えてとっとと東の方向へ足を向けたのだが。 案の定、由乃がしっかりとくっついてきているのを知ると、今度は西へと足を向ける。 「いじわるしないでよ」 由乃の声に冷たい口調で応じるキーリ。 「何でよ、由乃のせいで私追われる身になってしまったんだから」 「お願い…伝えたいことがあるの…私今日の5時で消えちゃうから、だから手伝って!」 「そんなの知らない」 由乃の訴えを無視して先へ進むキーリ。 だが、その耳にはしっかりと由乃の泣き声が聞こえてくる。 それでも構わず先を急ごうとするが、しくしくしくしくと声はキーリの心を締め付けるように、その頭の中に響いてくる。 「ちょっと泣かないでよ! 私が悪いみたいじゃないの」 耐えかねて振り向く、そして相手が握り返せないのを承知の上で右手を差し出す。 「たまたまだからね、私は由乃なんか知らないけど、でもハーヴェイを捜すのに連いて来るなら別に構わないから」 ありがとうありがとうと泣きじゃくる由乃を見ながら、キーリは少しだけ微笑んだ。 「長居は無用ね」 パイフウがいるのは城の北端の窓際だ。窓際から城壁までは十数メートル。 窓から地上までもそれくらいはあるだろう。 「さて」 パイフウは城内で見つけた、その先端には鉤状に折り曲げられた鉄パイプが結わえられている。 を思い切り城の外へと投げる、パイプが城壁の外に引っかかったのを確認し、 彼女はロープに気を込めていく…とだらんと足れ下がっていたロープがパイフウの気を受けて ピンと堅く張って行く。十分な強度となったのを確認し、 パイフウはくるりと身を翻して、ロープの上に乗るとそのまま綱渡りの要領で城壁までらくらくと歩いていく。 城壁まで来れば、あとは簡単だ。 そのまま飛び降り…着下寸前で気を地面めがけたたきつける。 空気の摩擦するような音が聞こえたかと思うと、地面に穴が開き、その反動で軽く跳ね上がったパイフウはそのまま鮮やかに着地したのだった。 「じってんれい、ね」 そう一言漏らすとパイフウもまた先を急いだ。 そして… 轟音と共に扉をぶち破ったのはハックルボーンとボルカンだ。 「さあ行かん、神罰を代行するは我にあり」 「はいはい…」 やる気満々の神父とは対照的にもうどうにでもなれと憔悴しまくりのボルカンだった。 【G-4/城門/1日目・09 00】 【ハックルボーン神父】 [状態]:健康 [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ [道具]:デイパック(支給品一式) [思考]:神に仇なすオーフェンを討つ 【ボルカン】 [状態]:健康 [装備]:かなめのハリセン(フルメタル・パニック!) [道具]:デイパック(支給品一式) [思考]:打倒、オーフェン/神父から一刻も早く逃げたい 【G-4/城外北/1日目・09 00】 【パイフウ】 [状態]:健康 [装備]:ウェポン・システム(スコープは付いていない) [道具]:デイバック一式。 [思考]:主催側の犬になり、殺戮開始/火乃香を捜す 【G-4/城外西/1日目・09 00】 【島津由乃】 [状態]:すでに死亡、仮の人の姿(一日目・17 00に消滅予定)、刻印は消えている [装備]:なし [道具]:なし [思考]:生前にやり残したことを為す/キーリについて行く 【キーリ】 [状態]:健康 [装備]:超電磁スタンガン・ドゥリンダルテ(撲殺天使ドクロちゃん) [道具]:デイパック(支給品一式) [思考]:ハーヴェイを捜したい/とりあえず西へ ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第239話 第240話 第241話 第221話 時系列順 第292話 第220話 キーリ 第335話 第238話 パイフウ 第250話 第220話 神父 第320話 第184話 島津由乃 第335話 第220話 ボルカン 第320話
https://w.atwiki.jp/yurina0106/pages/748.html
タグ かっこいい 曲名E 歌 reset 作詞 Tatsuo Kimura・satsuki 作曲 Tatsuo Kimura 作品 白詰草話 ~Episode of the Clovers~OP 白詰草話 オリジナルサウンドトラック「Colors」
https://w.atwiki.jp/vipjojogames/pages/47.html
| 何について調べますか?| ┌────────────┐| | 加速した時間の中で || | 神父から逃げる方法 || └────────────┘| [ オプション(O) ] [ 検索(S) ]|`──────────┐ ┌─── , '´l, ..| ./ , -─-'- 、i_ |/ __, '´ ヽ、 ',ー-- ● ヽ、 `"'ゝ、_ ', 〈`'ー;==ヽ、〈ー- 、 ! `ー´ ヽi`ヽ iノ ! / r'´、ヽ `´ヽノ ────────────────────────────────── スタンド名―「Escape From Pucci」 ジャンル―プッチだけにプチゲーム ────────────────────────────────── 概要― 675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日:2009/01/10(土) 13 51 51.96 ID wEQoZ6r90 超速神父からイルカを操作して逃げるゲームを 作ってる夢を見た このレスを見てちょっと作ったミニゲーム マウスでイルカを操作して、MIHの衝撃波を避けろッ! ちなみにネタミニゲームなのでクリアとかスコアとかはない 本来ここに乗せる価値はなかったが・・・まあ、まとめてくれと言われたので、ね コメント
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2088.html
Escape 第5話に戻る ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 6. (かがみ視点) 私は、額に浮かぶ汗を拭いながら、小高い丘の頂上にそびえ立つ別荘を仰ぎ見た。 白亜の外壁が、初夏の陽光を受けて眩い輝きを放っている。 「みなみさんの、別荘におじゃまするのは久しぶりです」 白を基調としたワンピースに、大きな麦藁帽子と、一昔前の令嬢を思わせる少女が感慨深げに呟いた。 誰もが美人と見とめる顔立ちだが、やや野暮ったい丸い眼鏡が、親しみを他者に与えている。 「みゆき。買出しに付き合ってくれてありがと」 「みゆきさん。ありがとうございます」 私と、隣を歩いている2つ年下の少女は、礼を述べた。 昨晩は、眠れるゆたかちゃんを別荘に運び、今朝は買い出しの為に運転している。 流石に負担が重すぎるから、買い物は夕方にしようと言ったのだけど。 「久しぶりに、泉さんにお会いできるのですから、多少の手間など惜しんでいられませんよ」 「あんたも相変わらずね」 「お褒めにあずかり光栄です」 やれやれ…… 私は、肩を竦めてみせた。 みゆきの暗躍が、ふたりの駆け落ちの主な原因だということを知ったのは、 追跡を諦めてから程ない頃だった。 結果としては、みゆきの工作が思い切り裏目に出たということだけど、恨むつもりは毛頭ない。 みゆきも、私やみなみちゃんと同様に、自分の欲望の赴くままに二人の仲を引き裂こうとして、 惨めに失敗しただけで、いわゆる同じ穴のムジナに過ぎないからだ。 「みゆきは、今もこなたの事を想っているの? 」 別荘の玄関の鍵を空けながら、敢えて尋ねてみる。 「さあ、どうでしょう」 しかし、みゆきは普段と変わらぬ微笑を浮かべながら、首を横に振った。 「もう、あきらめたのかしら」 「そういう訳ではありませんが…… 」 私のあからさまな挑発を軽く受け流し、買い物袋をテーブルに置いた。 「泉さんのお尻を追い掛け回しても、あまり、いい結果が得られませんでしたから」 皮肉めいた言い方が、多少癇に障る。 「私のやり方が間違いだっていいたいの? 」 「いいえ。そんな事はありませんよ」 買い入れた食材を仕分けながら、みゆきは苦笑した。 「私は、今回はのんびりと鑑賞する側に回らせてもらいます」 「本当かしら? 」 私は疑わしげな視線を向けた。みゆきの言葉は額面通りに受け取ってはいけない。 「傍観者として、みなさんの動きを見守るだけで十分だと思っておりますので」 「ふうん」 私は、曖昧な相槌を打った。相変わらず腹の底がしれない女だ。 「それに、もっとも激しく躍る者が、もっとも疲れるといいますからね」 みゆきの物言いには、皮肉と言うスパイスがたっぷりと振りかけられていたのだが、 敢えて追求をするのは愚かというものだ。 とりあえずは、現時点で味方になってくれていることに満足すべきだろう。 「そういえば、つかささんはどうしたのでしょう? 」 野菜を冷蔵庫に入れながら、みゆきが首をかしげた。 「玄関でチャイムは鳴らしたのですが…… 」 みゆきを手伝っていたみなみちゃんも、首を横に振っている。 「たぶん部屋で寝ていると思うわ」 私は、荷物を整理する手を止めて言った。つかさはとてもよく寝る子だから。 しかし、みゆきは怪訝な顔をしている。 「でも、小早川さんが一緒にいるんでしょう? 」 忌わしい名前が飛び出し、私は、身体をぴくりと震わせた。 脳裏に、名古屋の大須で大立ち回りを演じた時の、苦い記憶が蘇る。 正直なところ、こなたさえ何とかすれば、体力の無いゆたかちゃんを、 捕らえることなど造作もないと考えていた。 しかし、私達の動きを読まれた上に、強く抵抗されて一度は逃走を許してしまった。 幸いなことに、二人が居住しているアパートの最寄駅に張りこませたつかさが、 首尾良く仕事をしてくれたから良かったものの、一歩間違えれば、半年前と同じ醜態を晒すところだった。 「どうしました? かがみさん 」 「なんでもないわ」 心配そうに見つめている視線に対して首を横に振りながら、私は立ちあがった。 「つかさを起こしてくる」 「私も、行きます」 今まで黙っていたみなみちゃんが、後に続いた。 軋んだ音を立てながら階段を昇って、つかさに割り当てられた部屋に入ると、予想通り眠っていた。 「つかさ…… 起きなさい」 身体を何度か揺り動かすと、瞼がうっすらと開かれる。 「うーん」 猫のように手の甲をぺろりと舐めながら、何度も瞬きを繰り返した後、のんびりとした声をあげた。 「おはよ― お姉ちゃん」 「おはよ。つかさ。早速で悪いけれど、ゆたかちゃんはどうしたの? 」 「うーん。わかんない」 「先輩! ゆたかはどこです! 」 みなみちゃんの表情がたちまち変わる。 「たぶん、逃げたと思うよ」 「どうして逃がしてしまうんですか! 」 取り乱しながら、つかさの胸倉を掴んで、顔を真っ赤にして叫ぶ。 「まあまあ、落ちついてよ。みなみちゃん」 つかさは、ひどく興奮している後輩をなだめてから、誰もが吸いこまれそうな笑顔をみせて言った。 「ゆたかちゃんが『ココ』から逃げられると思う? 」 「あ…… 」 みなみちゃんはようやく気がついて、つかさを掴んでいた手を離した。 「でも、私、ゆたかを捕まえてきます」 みなみちゃんは宣言すると、忙しなく立ちあがって、部屋から出ていこうとする。 いくら逃げられないと分かっていても、一刻でも早く、ゆたかちゃんの身柄を確保したいのだろう。 「みなみちゃん」 つかさは、ドアを開けたみなみちゃんの背中に声をかけた。 「チェリーちゃんを連れて行った方がいいよ」 「チェリー? 」 振り返ったみなみちゃんは、一瞬、怪訝そうな顔つきを浮かべたが、直ぐに納得したようだ。 「チェリーに警察犬の役目を果させるのですね 」 「うん。ゆたかちゃんの下着が洗濯かごに入っているから使ってね」 「あ、ありがとうございます」 つかさに頭をさげると、みなみちゃんは、小さい女の子を捕獲する為に外に出ていった。 「つかさ…… アンタ何を考えているの? 」 私は、飼い犬を連れて駆け足で、別荘から遠ざかる少女を見下ろしながら尋ねる。 「私、単純な話は好きじゃないんだ 」 「何、それ? 」 つかさの言いたいことが全く分からない。 「えっとね。 ゆたかちゃんは囚われの身のお姫様だと思うの」 「はあ…… 」 お姫様という言葉に引っ掛かりを覚えるが、指摘するほどではない。 「私達に捕まってからは、ゆたかちゃんは大人しく待つこと以外に、何もすることがないよね」 「それが、何か問題なの? 」 「ゆたかちゃんには、もしかしたら脱出できるかもしれない、という希望をもって欲しいの。 例え、儚い望みでもね」 「あ…… 」 何となく、つかさの言いたい事が分かって…… 慄然とする。 「あんた。本当に恐ろしい子ね」 つかさは、ゆたかちゃんに脱出という希望を与えてから、再び絶望に陥れようとしている。 つまり、少しでも長く愉しむために、ゆたかちゃんを『わざと』逃がした。 「でもね。こころの一部では、ゆたかちゃんが見事に逃げおおせることも願っているんだ」 つかさは、天使のように無垢な微笑を浮かべたが、笑う気にはとてもならなかった。 こなたとゆたかちゃんが、遠い土地に逃げたことによる悪影響は、やはり深刻だ。 私はこなた、みなみちゃんはゆたかちゃんに対する妄執を抑えることができないし、 つかさは心の奥底にとんでもない闇を抱えてしまった。 「お姉ちゃん。こなちゃんに電話しないの? 」 背中を這い上るうそ寒さに震えている私に、つかさが尋ねた。 「あ、ああ、そうだったわね」 我に返ってポケットから携帯を取り出し、ボタンを押して耳に当てると1コールでこなたが出る。 『ゆーちゃんをどこにやったの? ゆーちゃんを返してよ! 』 切羽詰った怒鳴り声がいきなり聞こえる。 「こなたと話が出来てとても嬉しいわ」 今まで、何百回と電話をかけたにも関わらず、全て着信を拒否されていたのに、 ゆたかちゃんが攫われたらあっさりと繋がるとは、とても分かりやすい。 こなたの愛を一身に受けるゆたかちゃんに、改めて嫉妬してしまう。 『何、笑っているの! 』 一方、追い詰められたこなたは、余裕が全くない。 「あははっ、ごめんね。でもね…… 」 この瞬間、私はとても邪悪な笑みを浮かべているに違いない。 「ゆたかちゃんは逃げてしまったから。行方はわからないわよ」 『嘘だっ! 』 こなたが叫んだ。昔、彼女に強引に見せられたアニメに出ていた、女の子と同じ台詞だ。 「本当よ」 『嘘に決まっている。だって、ゆーちゃんが逃げたのなら、かがみは慌てているはずだよ』 やっぱりこなたは大好きだ。 受験の為の勉強はしなかったけれど、頭の回転はとても速い。 「ゆたかちゃんに逃げられたのは本当よ。でもね 」 こなたにみなみちゃんの別荘の場所を教えてあげる。 『そんな…… ひどいよ 』 予想通りこなたは絶句した。 憔悴する想い人の姿を想像すると胸が痛むが、心を鬼にしなくてはいけない。 「こなた…… 来てくれるわよね。勿論、駅まで迎えに行ってあげるわよ」 私は、敢えて勝ち誇った笑みを浮かべて、最愛の少女に対して念を押す。 『ゆーちゃんに何かしたら絶対に許さないから! 』 永遠ともいえる沈黙の後、呻くような低い声が耳朶に届いた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Escape 第7話へ続く コメントフォーム 名前 コメント …つかさ、本当に何を考えているんだ? -- 名無しさん (2008-05-28 01 29 54) うおおつかさが黒くなっている。しかし、みなみの別荘は一体 ドコにあるのかとても気になるЩ(゜д゜)Щ次回に期待(=ω=、) -- 九龍(九重龍太)くーろん (2008-05-24 22 11 36)
https://w.atwiki.jp/vocaloidchly/pages/1359.html
作詞:OneRoom 作曲:OneRoom 編曲:OneRoom 歌:初音ミク、ジミーサムP 翻譯:26 Fly 飛向夢想中的天空 Start 目標往極寒的世界 不久即將結束倒數計時 點燃引擎 來吧躍身起飛 躍身起飛 Freedom 再見了重力 Freak out 閉上了雙眼 來吧追逐天體 不知覺間超越了音速 再過 再過不久 地平超出閉塞線 現在 現在 現在 現在往前吧 大氣層突破 所有回聲全消逝 依乘著軌道 等速的飛行持續行進 地表已遠去 尚與之保持平行 孤獨的旅程 休憩的飛行開始加速 重力圈突破 所有抗力全消失 往無線遠處 等速的飛行持續行進 視界皆黑暗 穿過無指向思索 孤獨的旅程 等速的飛行持續行進 無論往遙遙何方 遙遙何方 遙遙何方 就往初始的記憶 往記憶處 就前去吧 沒有任何事物阻攔 彼方 直往世界的盡頭 Still sight 再見了生命 Still night 閉上了雙眼 現在超越臨界點 斷絕那天體之聲
https://w.atwiki.jp/goronka/pages/1799.html
【作品名】peakvox escape virus 【ジャンル】Wiiウェア(ゲーム) 【先鋒】ストレス 【次鋒】ランダス 【中堅】チェースス 【副将】DNA(vaccine) 【大将】DNA(シューター) 【参考】 【名前】DNA 【属性】DNA 【大きさ】ウイルスと同程度のオタマジャクシのような姿 【攻撃力】手が二本生えている大きさ相応のオタマジャクシ並 【防御力】【素早さ】大きさ相応のオタマジャクシ並 【名前】ストレス 【属性】ウイルス 【大きさ】ウイルス並 【攻撃力】参考のDNAが127体合体したDNAを触るだけで倒せる 【防御力】参考のDNAが127体合体したDNAと衝突しても無傷 【素早さ】DNAの半分ぐらいの速度のウイルス並。直進しかできない 【名前】ランダス 【属性】【大きさ】【攻撃力】【防御力】ストレスと同等 【素早さ】ストレスと同速。いろんな方向に移動できる 【名前】チェースス 【属性】【大きさ】【攻撃力】【防御力】ストレスと同等 【素早さ】ストレスと同速。常に相手を追尾する 【名前】DNA(vaccine) 【属性】【大きさ】参考のDNA並 【攻撃力】ウイルスを触るだけで倒せる 【防御力】ウイルスと衝突しても無傷 【素早さ】参考のDNA並 【備考】アイテムを取った状態。効果持続時間は10秒程度で、切れると全ての能力が参考のDNA並になる 【名前】DNA(シューター) 【属性】突然変異したDNA 【大きさ】参考のDNA並 【攻撃力】ウイルスを一撃で破壊できる弾を前方に連射。射程は体長の5倍以上。基本は参考のDNA並 【防御力】【素早さ】参考のDNA並 【備考】アイテムを取ると、5秒程度の間、全方位に弾幕を張れる状態になる。アイテムを取った状態で参戦 参戦 vol.93 92 vol.93 128 :peakvox consider virus:2010/04/02(金) 08 45 10 ID oyHGKNG6 peakvox escape virus 考察 全員ミクロンサイズであり、、順位はもう最下位に近い エイズウイルスの大きさは約0,1ミクロンだから127体合体しても0,5ミクロン・・・。 労使関係には先鋒が負ける。いくらなんでもポケットサイズの宇宙よりはましなので 労使関係>peakvox escape virus>ポケット宇宙
https://w.atwiki.jp/wiiware/pages/132.html
peakvox escape virus peakvox escape virusデータ ソフト紹介(メーカーより) 紹介映像 人気ソフトランキング ソフト紹介・感想 データ メーカー:ファンユニット ジャンル:エスケープアクション 配信日:2009/6/9 ポイント:500 プレイ人数:1 使用ブロック数:276 対応コントローラー:Wiiリモコン+ヌンチャク,クラシックコントローラ,ゲームキューブコントローラ Wi-Fi対応:ニンテンドーWi-Fiコネクション対応 ソフト紹介(メーカーより) かわいいDNAを操作して、凶暴なウイルスから、いかにうまく逃げ続けられるか? よけて、助けて、ジャンプして、たまには反撃して、ところせましと暴れ回ります。 誰にでもできる超簡単操作。奥が深い5つのモードを収録していて、それぞれのモードごとに違った感覚でプレイすることができます。 ニンテンドーWi-Fiコネクションに接続すれば、ワールドランキングを閲覧できて、世界中のみんなとハイスコアなどを競うことができます。 プロフィールデータは4つまで作成できるので、ご家族みんなでお楽しみいただけます。 紹介映像 人気ソフトランキング 一度もランクインしていない ソフト紹介・感想 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/xopsfan/pages/26.html
map15の換装マップ。マップ全景 コメント欄 名前
https://w.atwiki.jp/escape_2ch/pages/31.html
ESCAPE R3 SE フレーム GIANT ALUXX 6061-T6 アルミニウム オーバーサイズチュービング リプレーサブルリアエンドOLD130mm フロントフォーク GIANT クロモリユニクラウン BBセット TH 7420ST 113-68mm ギアクランク RPM 28/38/48T/CG 165mm(380、420)170mm(465、500) チェーン KMC Z7 F.ディレーラー SHIMANO T301 31.8 ダウンプル R.ディレーラー SRAM 3.0 シフター SRAM 3.0 TWIST 8S ブレーキセット TEKTRO RX1ショートアームVブレーキ ブレーキレバー TEKTRO TENERA スプロケット SHIMANO HG40 8S 11-32T ヘッドセット TH セミカートリッジインテグラル ハンドルバー HL ALUMINUM 25.4 580mm ハンドルステム HL ALUMINUM 25.4mm 90mm(380、420、465)110mm(500) サドル GIANT DX CS (410g) シートピラー KALLOY サスペンションポスト27.2x300mm (402g) シートクランプ ALLOY 31.8 QR ペダル VP ALLOY CAGE (164g×2) F.ホイール GIANT SPINFORCE 4x6 WHEELSET R.ホイール GIANT SPINFORCE 4x6 WHEELSET タイヤ MAXXIS DETONATOR 700x28C チューブバルブ 仏式バルブ(英式アダプター付) グリップ コンフォートタイプ (154g) 付属品 ベル(28g)、ロック、リフレクター(18g)、ドロヨケ、スタンド、Fキャリア 重量 11.7kg(465mm) カラー ブラック、ゴールド 定価(税込) 52,500円 注)2007年モデルのものです
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/1982.html
Escape 第1話に戻る ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2. (ゆたか視点) 5月下旬の夕方、私とこなたお姉ちゃんは同じ時間にバイト先を後にした。 土曜日の今日は、お昼のシフトだったので、外はまだ十分に明るい。 「ゆーちゃん、お仕事お疲れ様」 「こなたお姉ちゃんも、お疲れ様でした」 私は笑顔で頷いて、お姉ちゃんの顔を見上げながら腕によりかかった。 「ゆーちゃんの甘えんぼ」 「だって、温かくて柔らかいから」 苦笑するお姉ちゃんに向けて、少しだけ頬を膨らませてから笑ってみせる。 休日ということもあって、大須のアーケード街にはたくさんの人が繰り出している。 至るところから楽しそうな喧騒が聞こえてきて、行き交う人々の表情も明るい。 大道芸をしている男性の傍を通った時に、こなたお姉ちゃんが口を開いた。 「夕食は外で食べたいな」 「そうだね。おねえちゃん」 家に帰ってから、改めて食事をつくるというのはなかなか大変だ。 「今日は、久しぶりにラーメンな気分だけど」 「いいよ。こなたお姉ちゃん」 「ありがと」 直後にお姉ちゃんのお腹が鳴って、思わず笑ってしまった。 赤門の近くにあるラーメン屋さんで、野菜ラーメンとクリームぜんざいを注文する。 食券を挟んだ、番号が書かれたタグを渡され、3分程待っただけで、 「5番のお客様どうぞ」と声がかかった。 私達は、カウンターで、ラーメンとデザートを載せたトレイを受取った。 ほんのりと甘くてコクのある白いスープを啜っていると、 お姉ちゃんが私をみつめていることに気づく。 「顔に、何かついているの? 」 私は、あたふたしながら、ハンカチを取り出そうとポケットに手をのばした。 しかし、こなたおねえちゃんは、 「ううん。そうじゃないよ」 と言ったきり、ニヤニヤとしたままだ。 「お姉ちゃん、なあに? 」 「やっぱり、ゆーちゃんは可愛いなあって」 「えっと」 真正面から言われると照れてしまう。 どういう返事をすれば良いのか未だに良く分からない。 「ふふ。バイト先でも、ゆーちゃんは凄く良い評判なのだよ」 お姉ちゃんが店長さんから聞いた話によると、私がバイトを始めてから、 来客数と売上高が急激に増えたらしい。 もっとも、私自身は、ミスばかりしている記憶しかないのだけど。 「ゆーちゃんの良いところは、自分自身の魅力に気づいていないところかな」 私の『魅力』って何だろう。 正直言ってあまり思い浮かばない。 身体が弱くて、いつもこなたお姉ちゃんに、心配ばかりかけてしまっている。 その癖、とても強情で、駆け落ちを強引に実行してしまい、こなたお姉ちゃんに 大きな迷惑をかけてしまった。 「ゆーちゃんは欠点すら萌え要素に変えてしまうから」 お姉ちゃんは、限りない愛情を私に注いでくれている。 普通の恋人は…… とはいってもTVを見たり、雑誌を読んだりして耳にした 知識に過ぎないけれど、相手の振る舞いによって好感を抱いたり、 逆に不満をもったりする。 でも、こなたお姉ちゃんは、私の欠点を見つけたとしても萌え要素という、 肯定的な言葉に置き換えてしまう。 お姉ちゃんは、私に対して減点評価をしないのだ。 それでも、時々、心配になってしまう。 「お姉ちゃん。あのね…… 」 クリームを美味しそうに食べていた、お姉ちゃんは顔をあげる。 「何かな? ゆーちゃん」 「私の事で不満があったら言ってね。なおすように努力するから」 しかし、こなたお姉ちゃんは、深いため息をついてしまっていた。 「ゆーちゃん」 お姉ちゃんの顔つきは、急に真剣なものに変わっている。 「な、なに? 」 「そんなに私に気を遣わなくてもいいよ」 「で、でも、わ、わたし」 私は動揺して、しどろもどろになってしまう。 「ゆーちゃんは、ありのままが一番好きだから」 ありのままの私? 心の中で問いかけてみるが、容易に答えの出せる問題ではない。 「ゆーちゃんが、自分で嫌と思うところも、私にとっては大切な部分なんだ。 少し、分かりにくいかもしれないけれど、ゆーちゃんが頑張って自分の欠点を直そうとすると、 ゆーちゃんの長所も消えてしまうことがあるから」 「良いところも? 」 「そう、長所と短所は別々にあるのではなくて、連動しているものだから」 私が無理をして、欠点を直そうとすると、同時に長所も失ってしまう。 私は、お姉ちゃんの助言に頷かない訳にはいかなかった。 「ありがとう。こなたお姉ちゃん」 「素直なところは大好きだよ」 こなたお姉ちゃんは、元の霞みがかった笑顔に戻って片目を瞑ってみせる。 春の日差しのようにぬくもりのある微笑みに、心がときめく。 「こなたお姉ちゃんのこと…… 好き」 私は、こなたお姉ちゃんを真っ直ぐに見据えて言った。 「日の沈まないうちから、真正面から言われると照れるね」 顔を少しだけ赤らめながら、頭をぽりぽりとかきながら苦笑いするお姉ちゃんに、 クスリと笑いかけて―― 私は、凍りついた。 「どしたん? 」 あからさまに顔が強張った私の顔を、お姉ちゃんは心配そうに覗き込んでくる。 動悸を必死に抑えながら、耳元で囁く。 「かがみ先輩が歩いているのを…… 見たよ」 お姉ちゃんの表情もあからさまに変わった。 私達は、外から死角になる位置を見つけて座りなおす。 「ゆーちゃん。確かにかがみだったの? 」 お姉ちゃんは青ざめながら低い声で囁いた。 「一瞬だったから断言はできないけれど、かがみ先輩だと思う」 「そっか…… 」 こなたお姉ちゃんは呟いたきり、深刻な面持ちで考え込む。 沈黙しているお姉ちゃんを見ているうちに、私の不安は急速に膨らんでいく。 どうして、今更、かがみ先輩がここに来るの? まだこなたお姉ちゃんをあきらめていなかったの? 私達をどうするつもりなの? 心の中に湧き上がる不安に耐え切れずに、お姉ちゃんの腕にしがみつく。 歯の奥が酷く震えて、ガチガチと鳴ってしまう。 かがみ先輩は、私のこなたお姉ちゃんを奪い取るつもりだ。 だから、何百キロも離れた街まで追いかけてきたんだ。 私は、かがみ先輩の執念深さに、身震いをするしかなかった。 「こ、怖いよ、お姉ちゃん」 「ゆーちゃん。落ち着いて」 こなたお姉ちゃんは、私の背中を撫でてくれるけど、お姉ちゃんの手のひらも細かく震えている。 「ゆーちゃん。あと二つ程、聞きたいことがあるんだけど」 それでも、情報を得ようとするお姉ちゃんは、冷静さを保っていた。 「何? 」 「ゆーちゃんが見たのは、かがみだけだった? 」 私も心を懸命に落ち着けながら、慎重に考えた末に答える。 「かがみ先輩だけだったけれど、他の人もいるかも」 「そっか…… そう考えるべきだろうね」 こなたお姉ちゃんは、顎に手をあてながら静かに頷いた。 多分、つかさ先輩や、高良先輩、そしてみなみちゃんも一緒に来ているだろう。 彼女達が襲いかかって来たら、逃げ切れる自信なんて…… 全くない。 「どうして…… 私達の場所、分かったのかな? 」 私は、半ば独り言のように呟いた。 「うかつだったよ。あの番組の取材のせいだね…… 」 こなたお姉ちゃんは嘆息してから天を仰いだ。 「ごめん。ゆーちゃん。てっきり地元局限定のメイドカフェ特集だと思い込んでいたよ」 「ううん。私もそう思ったから」 正直、お姉ちゃんも私も、油断があったのだと思う。 もちろん、TV局は私達ではなくてお店の取材に来たわけだし、 従業員がリポーターの取材を断る訳にはいかない。 しかし、取材の日時は数日前から分かっていたし、その時間帯にシフトを外すことも可能だった。 それでも、はるばる埼玉から名古屋まで想い人を追ってくるという行為自体に、 狂気を感じてしまう。 2度目となると最早、恐怖でしかない。 そして、去年の12月は、かがみ先輩の顎から辛うじて逃れることができたけれど、 今回も幸運が訪れるとはとても思えない。 「お姉ちゃん。どうしよう」 ひたすら唇を動かしていないと、心が折れてしまいそうだ。 しかし、お姉ちゃんは私の質問に直接答えることはせずに…… 「もう一つの質問だけど、かがみはどちらの方向に歩いていったかな? 」 と尋ねてくる。 「えっと…… 」 私は、少しだけ考えてから答えた。 「かがみ先輩は…… 大津通りの方から来て、バイト先の方に向かったよ」 「ありがと」 こなたお姉ちゃんは小さく頷いてから立ち上がった。 「ゆーちゃん。店を出よう。ここにいるのは危険だ」 「うん」 私達は立ち上がる。 既に料金は払っているので、そのまま店を出て、大津通りに向かう。 赤門をくぐり右に折れて、万松寺の駐車場の脇を通り抜ける。 つい先程までの楽しい気分は、完全に吹き飛んでしまい、私は、何度も後ろを振り返りながら、 こなたお姉ちゃんに寄り添うようにして歩く。 不安は膨らむばかりだったけれど、自分ががんばらなきゃと思いなおす。 こなたお姉ちゃんに頼ってばかりでは駄目だ。 私が、お姉ちゃんを助けるくらいにならないといけない。 「ゆーちゃん。地下に入るよ」 「うん。私、大丈夫だから」 私は、精一杯力強く頷いてから、こなたお姉ちゃんに微笑んでみせる。 「ありがと、ゆーちゃん」 お姉ちゃんは微かに頬を緩めてから、私の掌を強く握り返した。 私達は、地下鉄上前津駅に向かう階段を降りていった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Escape 第3話へ続く コメントフォーム 名前 コメント さあどうなるか……ヤッパリぶつかるか!? -- 名無しさん (2008-05-08 22 27 32) エロープシリーズかなり続きますねぇ。かがみがどうでるか期待 -- 九重龍太§ (2008-04-30 07 44 17) しょっちゅう行ってる場所なので、鮮明に情景が思い浮かんだw -- みみなし (2008-04-27 01 48 08) 地元民としてかなりのめり込みました!GJです!続き楽しみに待ってます! -- 名無しさん (2008-04-26 22 42 41) 相変わらずGJ! 今回はニアミスだったが、バイト先をおさえられてるから激突は必須か… -- 名無しさん (2008-04-26 22 18 51)